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はじめに

日本刀は古くは平安時代からの長い歴史の中で確立された世界に誇れる日本の文化的遺産です。日本刀は一般的に武器としてのイメージが広く普及しておりますが単なる武器としての実用性だけでなく精神性や美術性が備わっております。天地万物を組成する五行(水、火、木、金、土)で製造され、その鍛え抜かれた地肌や刃紋の美しさは人々を魅了しまた威武の念から恐れられた日本刀は実用性、精神性そして美術性の3つの要素を持って長い間日本の歴史に深く関わってきました。武士の表道具として美術的価値が高く評価され大切に保管され続けてきた我が国固有の日本刀を後世に正しく伝える事は日本刀に携わる我々の大切な使命であります。一般的にむずかしいと思われがちな刀剣の所持に関する法律を簡単に説明致します。まずは銃砲刀剣類規制の概要についてお話しさせて頂きます。昭和20年8月の終戦以降連合国軍の占領下に措かれた我が国は武装解除に伴いすべての銃砲刀剣類が取り締まり対象となりました。連合国軍最高司令官から「民間武器引渡命令」が発せられ、仮許可証の無い猟銃及び美術刀剣類をすべて警察署に提出させる為に昭和21年「銃砲等所持禁令」が制定されました。その後昭和25年5月に銃砲刀剣類の取り締まりは連合国軍から日本政府に委任された事により「銃砲刀剣類所持取締令」が公布されます。これ以降も度々の法制定及び改正がありこの間に、戦前はすべて警察の所管であった銃砲及び火薬類に関する事項は通商産業省及び都道府県知事部局に、古式銃砲及び美術刀剣類等に関わる事項は文化庁及び都道府県教育委員会にそれぞれ移管されました。さらにその後の世情の変化により火薬類の一部に関わる事項が再び警察へ移管されました。現在の「銃砲刀剣類等所持取締法」は昭和33年3月10日に法律第六号として公布され、その後も諸情勢の変化に伴い更に数次にわたる法改正が行われ現在に至っております。

刀の発見から登録まで

現在我が国にはおよそ250万振りの日本刀が登録されております。昭和26年に銃砲刀剣類登録証が発行されるようになり既に60年の歳月が経ちますが、未だに数多くの日本刀が新規に登録されております。今後も更に登録手続きの済んでいない数多くの日本刀が出てくると思われます。この機会に改めて登録証の有無を確認して頂ければと思います。無登録の刀が発見されるケースは様々です。引っ越しや実家の整理などで物置などから発見される場合や建物の改築に伴い屋根裏や床下から出てくるケース。また中には親族の遺品として譲り受けたが登録証の行方が分からない物、GHQより出された許可証をそのまま知らずに所持しているといったケースもあります。もし家の中から登録証の無いものが出てきた時はまずその所轄の警察署の生活安全課に行き発見届けの申請を行いましょう。時々実家の整理をしていたら刀が出てきたので一旦自分の住んでいる場所に持ち帰り改めて発見届けをしようとする人がいますが、必ず刀が発見された地域の所轄の警察署へ届け出るようにしましょう。また発見届けはその刀が出てきた家の世帯主が申請をしますが事情によってはご家族の方でも構いません。ただし第三者が発見届けの申請を代行する事は出来ませんのでくれぐれも注意致しましょう。発見届けの申請に必要なものは発見された刀と印鑑です。発見届けの申請用紙は各警察署の生活安全課に備えてありますので刀が発見された場所、日時やいきさつを説明すれば発見届けの書類を作成しくれます。発見届けの際は刀が錆びていても研いだりせずに発見された時のままの状態で手続きをしましょう。よく発見届けをしに警察署へ行くと逆にその場で罰せられたり刀を没収されたりするのではと心配する方がいますがそのような事は決してありません。また絶対外へ持ち出さずにずっと家の中にしまっておけば発見届けの申請が必要ないと思っている方もおりますが、家から持ち出さなくても無登録の刀剣類を所持していると銃刀法違反になりますので必ず発見届けを申請しましょう。

登録審査

発見届けまでは警察の管轄ですが登録証に関する事は文化庁の管轄となり登録証の交付は各都道府県の教育委員会で行われます。警察署で発見届けの申請が済むと、後日各都道府県の教育委員会より登録審査の場所と日時について連絡があります。その指示に従い登録審査を受けますが当日は登録審査を受ける刀、発見届出済証、印鑑そして登録料を持参します。登録審査は本人以外の第三者に依頼する事も出来ますが、この場合は委任状が必要になりますので注意しましょう。登録審査は各都道府県の教育委員会で文化庁より委属された登録審査員により発見届けを受けた刀が美術品もしくは骨董的価値があるか否かを審査されます。ほとんどの刀は登録証交付の対象となりますが一部登録証の発行されない刀もあります。登録証が交付されない刀の例として昭和期に制作された半鍛錬の軍刀(茎に桜やイカリの刻印がある)やサーベルなどの外国製の刀剣類は対象外となり登録証は交付されません。ただし軍刀の中には美術的又は骨董的価値のある刀をあえて軍刀として仕立て直されたものがありますので全ての軍刀が必ずしも登録されないと言う事はありませんのでご注意ください。また登録証が発行されない場合でも刀がすぐその場で没収される事はありませんので安心してください。半鍛錬の軍刀でも親族の遺品等であった場合には特例の処置もあるようですので各都道府県教育委員会に問い合わせてみましょう。また古式銃砲(火縄式銃砲、火打ち石式銃砲、管打ち式銃砲、紙薬包式銃砲、ピン打ち式銃砲、及び前各号に準ずる古式銃砲)にも登録証が発行されますが日本製銃砲は概ね慶応三年以前に制作されたもの、外国製銃砲は概ね慶長三年以前に伝来したものというのが登録対象の基準になっております。

登録証に関する事

昭和26年以降発行されている現在の銃砲刀剣類登録証とは別に戦後様々な所持許可証が発行されましたが現在では使用する事は出来ません。このような許可証の付いている刀剣類をお持ちの方は速やかに所轄の警察署又は各都道府県教育委員会に相談し新規に銃砲刀剣類登録証の申請をしましょう。交付された登録証は紛失しないように大切に保管しておきましょう。万が一登録証を紛失した場合、まずは所轄の警察署に亡失・盗難・滅失の届出をします。その際の届出番号と申請日を記録し、登録証の亡失・盗難・滅失理由書、登録証再交付の申請書と共に各都道府県教育委員会へ提出する必要があります。登録証のコピーや控えがあり登録番号が分かっていれば直ぐに再交付を受ける事ができますので登録証のコピー又は内容を記帳しておくことをお忘れなく。登録証が発行された刀剣類は登録証を申請した人に限らず、売買や譲渡により誰でもその刀を所持する事が可能となります。但しその場合は銃砲刀剣類等所有者変更届をその刀が登録されている各都道府県教育委員会に20日以内に提出する義務があります。最近の登録証では少なくなりましたが登録証には時々記載事項に誤りがある場合がありますが間違いに気が付いた場合は速やかに登録証の発行されている各都道府県教育委員会に連絡をして再交付を受けてください。また銘文、寸法、目釘穴数の変更等により登録内容を変更したい場合は新規の登録申請が必要となります。変更前と変更後の押し型を添付し、変更届と登録申請書を各都道府県教育委員会に提出してください。昨今は海外の愛刀家も非常に多くなり刀を外国へ輸出する機会も増えてきました。登録されている刀を国外へ持ち出す場合は文化庁文化財保護部美術工芸課に申請書を提出して国指定の文化財に該当しない刀剣である古美術品輸出監査証明書を交付してもらわなければなりません。その際は申請書と一緒に登録証を返納する必要があります。その他不明な点は各都道府県教育委員会に問い合せ確認をしましょう。

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